アフィリエイト始めました。

限界オタクのにわか数学屋さんが書いています。

修論アーカイブス 数論1「リーマン予想とゼータ関数」

※このシリーズでは複素解析や二次体論等の知識を仮定しますが、今回は必要ありません。


アメリカにあるクレイ数学研究所は七つの未解決問題に懸賞金をかけました。2018年現在、ポアンカレ予想は解決され残りは六つです。そのうち、リーマン予想はフィクションなどでもよく取り上げられ、最も有名な未解決問題の一つと言えるでしょう。

リーマン予想

ところで、音に聞くリーマン予想とは一体どのような主張なのでしょうか。ゆかいなインターネッツなどで適当に検索すれば文言として視界に入れることは可能でしょう。

リーマン予想
複素平面に解析接続されたゼータ関数 \zeta (s) の非自明な零点は全て  \displaystyle {\rm Re}(s)=\frac{1}{2} 上に存在する。

大体どこもこんな感じで書いてあると思います。このままでは何のことだかさっぱりなので、今回は厳密にわちゃわちゃするでなく、雑に主張を理解しようというコンセプトでやっていきます。

ゼータ関数

リーマン予想における主役はこの関数です。実はゼータ関数と言うと様々な種類がありますが、一般化されていない、所謂リーマンゼータ関数のことだと思ってください。歴史的に見て最も古く、最も有名なゼータ関数です。数学専攻でなくても力学系微分方程式系を扱っているならご存知の方も多いと思います。

リーマンゼータ関数
 \displaystyle \zeta (s)=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^s} \ \  (s > 1)

右の無限和が s=1 で発散するというのは高校の数学でもやりましたね。反比例のグラフを書いてその積分と比較をしたアレです。つまり発散のオーダーは  \log になります。同じく積分の要領でこの関数が s>1 で収束することが簡単に分かります。厳密に証明したければ  \epsilon - \delta を使ってください。

次に複素平面への拡張ですが、{\rm Re}(s)>1 の場合にはオイラーの公式(でなくてもいいんですが)から同じ議論で無限和が収束するので、問題なく定義域を拡張できます。{\rm Re}(s) \le 1 の場合に、解析接続という手法を用います。簡単に言えば、限られた定義域内で美味しい性質(正則)を持つ関数に対して、その定義域をいい感じに広げることができる(連結性)というものです。先にも言った通り細かい議論は割愛しますが、複素関数論の簡単な教科書にも載っていると思います。

この解析接続により、リーマンゼータ関数s=1 を除く全複素平面にその定義域を拡張することができます(関数によってはここまで上手く拡張できない場合があります)。ここで小話としてゼータ関数の特殊値について紹介したいと思います。

解析接続された \zeta (1) が発散することについては言及しました。
では、\zeta(2)\zeta(0) = 1+1+1+\dots\zeta(-1)=1+2+3+\dots などはどうでしょうか。どうでしょうも何も後ろ二つは発散するやんけとお思いの方も多いでしょう、しかしこれが解析接続の不思議なところなのであります。というか直感に反する例としてよく取り上げられていますね。

答え合わせをします。


\begin{eqnarray}
        \zeta(2)&=&\frac{{\pi}^2}{6} \\
        \zeta(0)&=&-\frac{1}{2} \\
        \zeta(-1)&=&-\frac{1}{12} 
       \end{eqnarray}

一つ目はバーゼル問題という有名な問題ですので、あっこれ見たことあるわってなるかもしれません。二つ目以降については論理的にはあんまり正しくない計算方法(ただし直感的に分かる)や解析接続を交えた細かい証明などもその辺に落ちていますので、ここでのネタバレは控えさせていただきます。決して解説が面倒だとかそんなことはありません。ありませんとも。

このような議論に興味を持っていただけた方は諸手を挙げて歓迎します。ようこそ、沼へ。

話を本筋に戻します。このゼータ関数の零点、というところでしたが実は特殊値と少しばかり関係があります。零点というのは、代入したら0になる値(点)のことです。方程式 \zeta(s)=0 の解だと思ってもらって構いません。

例えば関数 f(s)=|s|-1 の零点はすなわち |s|-1=|x+yi|-1=0 \ (x,y \in {\mathbb R}) の解なので、複素平面上に原点を0とした半径1の円を描きます。自明な零点というのは要するに超分かりやすい零点のことですが、ゼータ関数 \zeta(s)s が負の偶数の時に値0を取ります。つまり、-2、-4…が自明な零点というやつです。超分かりやすいですね。

非自明、すなわち簡単には分からない零点が他にもあって、それらは全て s=\frac{1}{2}+yi \ (y \in {\mathbb R}) の形で表されるというのがリーマン予想の主張です。記憶の限りでは、計算により十万個単位で非自明零点が見つかっていて、いまのところはすべてこの予想を満たしているらしいです。

どうでしたか、リーマン予想の主張はご理解いただけましたでしょうか。途中の議論はすっ飛ばしたのでそこんとこ詳しくという要望があれば別個に書きたいと思います。ではまた。